皆様、こんにちは。大阪市平野区の「ゆうき歯科」院長の西村裕貴です。
当院の訪問歯科診療部門では、ご高齢で通院が難しくなった方々への診療はもちろんのこと、近年特に力を入れている分野があります。それが「障がい者・障がい児に対する訪問歯科診療」です。
本日は、なぜ私たちが障がいを持つ方々への訪問歯科に真摯に取り組んでいるのか、その社会的背景をお伝えするとともに、単なる「歯の治療」にとどまらない、当院ならではの「ケア×リハビリ×栄養」を踏まえた包括的なアプローチについて詳しくお話しさせていただきます。
1. 障がい者(児)の歯科診療ニーズが高まっている背景
現在、日本全体で障がいを持つ方々(障がい児を含む)の数は増加傾向にあります。それに伴い、通院での歯科受診が身体的・精神的に困難な方々に対して、ご自宅や施設へ直接伺う「訪問歯科診療」の必要性がかつてないほど高まっています。障がいを持つ方々がお口のトラブルを抱えやすいのには、いくつかの理由があります。 例えば、ご自身で十分な歯磨きやうがいを行うことが難しい場合が多く、虫歯や歯周病のリスクが必然的に高くなります。また、お口周りの筋肉の緊張や麻痺、あるいは発達の遅れなどにより、「しっかり噛む」「上手に飲み込む」「明瞭に話す」といった、私たちが普段無意識に行っている動作そのものが困難なケースも少なくありません。
さらに、障害者支援施設等における「入所者の高齢化」も深刻な課題となっています。 厚生労働省の調査データによると、高齢化に伴う症状が顕著な入所者がいる施設に対し「具体的な利用者の症状」を聞いたところ、「全体的な体力低下(79.5%)」や「歩行困難(75.1%)」に次いで、「嚥下(えんげ)障害」が74.5%に上ることが分かっています。また、施設側が「利用者の食行動等で困っていること・気になること」として、「嚥下機能の低下(むせ、誤嚥等)」を挙げた割合は実に87.1%、「口腔機能の低下(義歯、噛み合わせ等)」は63.0%にも達しています。 これに対応するため、82.2%の施設が「きざみ食や流動食などの形態特別食」を提供し、71.0%の施設で「食事介助場面が増加」、60.8%の施設で「口腔ケア場面が強化」されているという実態があります。
このデータが示す通り、障がいを持つ方々のお口の健康を守ることは、介護・福祉の現場において極めて切実かつ重要な課題となっているのです。
2. 国を挙げて推進される「障がい者歯科」と「口腔機能」へのアプローチ
こうした医療・介護現場の強いニーズを受け、国も大きな動きを見せています。 令和8年度の診療報酬改定においても、障がい者歯科治療は重点課題の一つとして位置づけられました。例えば、障害者歯科治療を専門に行う歯科医療機関において特別な歯科医学的管理を行った場合の評価(特別管理加算)が新設されたほか、小児の「口腔機能発達不全症」や、成人の「口腔機能低下症」に対する管理料の評価引き上げや対象患者の拡大が行われました。これはつまり、「ただ虫歯を削って詰めるだけの歯科治療」から、「安全に食べたり話したりするための『口腔機能』を国を挙げて育て、守っていく医療」へと、歯科の役割が大きくシフトしていることを意味しています。
3. ゆうき歯科が実践する「ケア×リハビリ×栄養」の診療
私たちゆうき歯科は、「食医(しょくい)」としての覚悟を持ち、「どれだけ安全に、安心して食べられるか」を見極め、支える医療を提供しています。 障がいを持つ方々に対して、私たちは単なる歯科治療の枠を超え、「口腔ケア」「口腔機能管理」「食支援」という3つの柱を掛け合わせた包括的なアプローチを行っています。
① 専門的な「口腔ケア」で全身のリスクを防ぐ
ご自身での清掃が難しい方に対して、歯科衛生士が専門的な機材を用いてお口の中の徹底的な清掃を行います。お口の中の細菌を減らすことは、虫歯や歯周病の予防はもちろん、誤嚥性肺炎(お口の細菌が誤って肺に入り炎症を起こす病気)を防ぐための「命を守るケア」に直結します。ご家族や施設スタッフの方々へ、日々の負担を減らしつつ効果的に行えるケア方法のアドバイスも行っています。
② 「摂食嚥下リハビリテーション」で食べる・話す力を育む
お口の機能が十分に発達していない障がい児のお子様や、機能が低下してきた大人の障がい者の方に対し、お口や舌の筋肉を鍛えるトレーニング(お口の体操やマッサージなど)を行います
。「むせやすい」「うまく飲み込めない」といった症状を少しずつ改善し、より安全に、スムーズに食事を楽しむための「攻めの医療(リハビリ)」です。
③ 「食支援」で安全に美味しく食べるための栄養管理
お口の状態や噛む力、飲み込む力に合わせて、管理栄養士などの専門職と連携し、最適な「食事形態(きざみ食、ペースト食など)」や「栄養摂取の方法」をご提案します。どんなに素晴らしい治療やリハビリを行っても、実際の食事がその方に合っていなければ意味がありません。「食べたい」という願いを安全な形で叶えるための土台となるのが、この食支援と栄養管理なのです。
4.多職種がスクラムを組む「チーム医療」の強み
障がいを持つ方々の「食べる・話す」お口づくりは、私たち歯科単独の力だけでは成し得ません。 だからこそ、ゆうき歯科では「チーム医療」を何よりも大切にしています。
歯科医師、歯科衛生士といったお口のプロフェッショナルはもちろんのこと、栄養のプロである管理栄養士、言葉と飲み込みのプロである言語聴覚士、そして日々の生活を支える医師やケアマネージャー、施設スタッフの皆様と密に連携し、情報を共有します。
それぞれの専門職が強みを持ち寄り、「この方には今、どのようなケアと食事が最適か」を多角的に議論することで、初めてその方の人生に寄り添った本当に質の高いサポートが可能になります。私たちは、ご家族や支援者の皆様と同じチームの一員として、患者様の健康を支えたいと考えています。
5.ご家族・施設関係者の皆様へ
障がいを持つ方々が、ご自身の口で安全に食事を楽しみ、笑顔でコミュニケーションをとれること。それは、ご本人の生きる喜び(QOL)に直結するだけでなく、日々の食事介助やケアに奮闘されているご家族や施設スタッフの皆様の負担軽減、そして心のゆとりにもつながると信じています。
「最期まで口から食べさせたい」 「最近よくむせるようになって心配だ」 「お口の中のお手入れ方法がわからなくて困っている」
そのようなお悩みがあれば、決して抱え込まず、まずは私たちゆうき歯科にご相談ください。 年齢や障がいの程度にかかわらず、お一人おひとりの生活と背景に真摯に向き合い、安全に食べたり話したりできる「お口づくり」を全力でサポートさせていただきます。
食べる幸せを、一緒に守っていきましょう。